こんにちは。
姫路の司法書士の西川です。
今日は、不動産業者様向けの話になりますが、新中間省略登記の話です。
不動産登記法改正により一旦禁止された中間省略登記が認められて何年かたちましたが、より判りにくくなった感はあり、売買契約に特約も付けなければなりませんので、通常通りA→B→Cと売買契約を締結した後に、登記だけA→Cにお願いしますといわれてもできません。
そこで、今回は整理がてらの記事です。
A → B → C
売買契約 売買契約
所有権移転 所有権移転
→ → → → → →
所有権移転登記
従来の中間省略登記は、①AB間②BC間の2つの売買契約により、所有権がA→B→Cへと移転しているにも関わらず、AからCへと直接所有権移転登記を行うものでした。
本来、この方法は実体がA→B→C、登記がA→Cとなり、物権変動の過程を忠実に登記に反映させるという「不動産登記制度の理念」に反するため認められませんが、登記申請システム上中間省略登記とわからないこと及び判例が一度なされた中間省略登記を有効としていることから、広く行われていました。
しかし、不動産登記法改正による登記申請システムの変更で、登記申請時に中間省略登記と判明してしまうことになったため、事実上不可能になりました。
そこで、実務界からの強い要請を受け、新しく認められたのが直接移転売買(第三者のためにする契約)方式です。
まず、第一に昔と同じような中間省略登記が認められたわけではありません。
新しい第三者のためにする契約方式は以下のようになります。
A → B → C
売買契約 売買契約
→ → → → → →
所有権移転
→ → → → → →
所有権移転登記
この方式は、AB間BC間の売買契約にそれぞれ特約を付けることにより所有権を、Bを経由することなく、直接AからCへと移転するものです。これにより、実体がA→C、登記がA→Cとなり、実体と登記内容が合致するので、登記が認められることになります。
AB間の売買契約には下記の特約を付ける必要があります。
(1)所有権がBにではなく、Bの指定する第三者に直接移転すること
(2)売買代金を払った後でも、所有権はAのまま移転しないこと
(3)Aは受益の意思表示の受領をBに委託すること
(4)BがBC間の契約で負うことになる所有権移転義務を、Aが代わって履行すること
BC間の売買契約には下記の特約を付ける必要があります。
(1)所有権が未だにAにあること
(2)Bが負う所有権移転義務はAが履行すること
(1)節税効果
中間者Bの税コストを削減することができます。登記手続に関する登録免許税は当然ですが、従来の中間省略登記と異なり、Bは
所有権を取得しませんので、不動産取得税もかかりません。
(2)売買代金を知られない
AB間とBC間の売買契約は別個のものですので、AとCは顔を合わす必要もありません。また、AB間の売買代金をCが知るこ
とは出来ませんし、BC間の売買代金をAが知ることもありません。
(3)瑕疵担保責任の回避
AとCが個人の場合、Aは瑕疵担保責任を特約で外してほしい、Cは瑕疵担保責任をきっちり負担してほしい、という要望がある
と思います。この場合、不動産業者Bが間に入ることにより、AB間の売買契約ではAが瑕疵担保責任を負担しないように特約を付
け、BC間の売買契約ではBが瑕疵担保責任を負担するように、別個の取扱いができます。
(Bが宅地建物取引業者の場合、瑕疵担保責任を免除することは出来ません)
(1)AB間の売買終了後も登記名義がAに残ること
中間省略登記ですので、BがAに売買代金を支払った後でも登記名義はAのまま残ります。Aが勝手に全くの第三者Dに売却して
先に所有権移転登記を経由した場合、BCは対抗することができません。このようなリスク回避のため、B名義の根抵当権設定仮登
記だけ行うこともできます。
(2)Aの印鑑証明書
通常AB間の決済時にAの印鑑証明書を預かることになりますが、3か月の期間制限を過ぎてもBC間の決済ができない場合(C
を見つけることが出来なかった場合)は、Aに印鑑証明書を貰いなおすか、又は取りあえずBへの所有権移転登記をする必要があり
ます。
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